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100%を目指さないで。たくさん助けてもらって80%になればいい。

公開日2017/05/24最終更新日2019/07/17

■難聴が判明した時

100%を目指さないで。たくさん助けてもらって80%になればいい。

デフサポのユカコです。

こちらのブログを読んでくださっている方は、お子様のこと、そしてこれからをちゃんと考えておられる方だと思います。

そんな素敵な親御さんがどうしても陥りがちなのが…

・ことばをとにかく”完璧に”話せるようになってほしい
聞こえる子とおなじように会話ができるようになってほしい
・うちの子は聴覚活用もできていて、日常会話ではほぼ問題ない

・ことばも遅れていないし、むしろ知能度数は高いし大丈夫!

・聞こえる子と大差ないし、電話もできるし、気をつけることなくない?

と思ってしまうこと…。
もちろん、みんながみんなそうではありませんが最近のカウンセリングからはこういう傾向が多く、特に人工内耳を早期のうちにして現状ことばが遅れていない家庭だとそう思ってしまうのかもしれないなと感じています。

「喋ることができる=言語力と思考力が高い」ではない!

手話、口話に限らず「喋れること」と「言語力・思考力」は比例しません
低年齢のうちは喋れれば=ことばを知っているとなりますが、それは小さいうちだけです。

ある程度の年齢を超えてくれば喋れていても、思考的言語力が育っているかは別ですし、さらにコミュニケーション能力やソーシャルスキルが身についているかはまた別問題です。

人工内耳をしていて上手に話せている子供であっても、長く接しているうちにあれ…??と思うことは正直ものすごく多く、ここはちょっと気にしてほしいと思っています。

100%聞こえる子と同じレベルを求めない。目指すのは80%で満足する勇気!

もちろんことばの力をつけてちゃんと考えたりする力は必要です。
特に幼少期にこういったことばの土台をしっかりつくることは必須と言ってもいいくらい。

ですが、”100%”聞こえること同じレベルでのコミュニケーションを目指せとは言ってません!

セルフアドボカシー

大事なのは”セルフアドボカシー”と最近良く出てくることばですが…セルフアドボカシーとは簡単に言うと、この3つの力です。

・自分の難聴についてちゃんと考えて理解できる力
・周囲と比較してどう違うのかを適切に見極める力
・どう困っているのか、どういったことに対応してほしいのかを相手にわかるように伝える力

そしてこういった力は「ことば」の力と「思考力」がないとできません。

つまり、、、当然ことばの力をつけることが大切なのですが言いたいのは「聞こえる子と100%同じ聞こえや生活は絶対に無理!」ということ。「ことば」の力は100%聞こえる子と同等にあっても、聞き取りを含めて生活面では厳しいものがあります。

50dBでも100dBでも、人工内耳で25dBまで補聴しても”聞こえていません”。

聞こえないって言うのは、それだけ大変です。だから「聴覚障害」と言われるわけです。

特に、こういった人工内耳や、中等度難聴の方の場合は
普段、日常会話ではコミュニケーションが取れるため、

・もうそんなにことばの心配をしなくてもいいかな~

・気にしてきたけど、充分ことばを覚えてきた!
・うちの子結構聞こえてるから学校生活もあんまり問題はなくて~

とおっしゃるご両親が意外と多いのですが、

いやいやいや!!!

補聴器も人工内耳も完璧じゃありません。

お子さんは頑張って聞こえる子に追い付いているように見えますがやっぱり穴は本当にたくさんあります。

ことばだけでなく、いろいろな面で。
なので必ず生活面も含め、先ずはご両親がちゃんと「聞こえない子」というのを自覚しておいてあげてください。
聞こえない子は聞こえないことが当たり前なので、こういったことが分かってるようで分かってないんです!

聞こえていると思ってしまうのは一番危険!

聞こえる子のなかでうまく順応しているんだったら、それはお子さんが聞こえる子以上に努力して頑張っているんです。(意識的か、無自覚かは別として)

ご両親の声は聴きやすいですし、ご両親はちゃんと「聞こえない子」の分かる話し方ができます。なので家でのコミュニケーションも問題はないですし、お子様もなんとなく普通に会話できてしまいます。

しかし、ひとたび幼稚園や学校に出ると一気に周囲の言ってることがわからなくなってしまうんですね。

学校でトラブルが起きている、ご両親が思っている以上に周囲のコミュニケーションについていけていない・・・といった話を学校の先生や、支援学校の先生からお伺いすることが最近多くなってきています。

軽度難聴や中等度難聴でも、ご両親が思っている以上に分かっていません。そこをまず忘れないであげてほしいとおもいます。

そして何より当事者である私自身から言いたいこととして、聞こえないことを完璧に聞こえるようにするのはどれだけ頑張っても無理!

聴者と同様の聞こえまで持ってくることは、絶対にできない。

私自身、コミュニケーションは得意な方かなと思います。
それでもやっぱり聴者の50%〜60%の情報量しか入ってきていないですし、わからないシーンは多々あります。それどころかわからないことにすら気がついてないまま終わっているシーンもたくさん。

夢の無いことを言いますが・・・事実なのではっきり言います!笑

完璧な聞こえや完璧なコミュニケーションを求めるのは無理です。
そこを目指して、「発音を完璧に」「友達付き合いも完璧に」「友達ともたくさんお話しして!」というのはご両親の希望です。

希望と現実は違います。

子供はどうしても本能的に親の期待に応えようと頑張ります。
そこで親の期待が「聞こえる子と同じように・・・」だと
絶対に追い付けないので子供は本当につらくなってしまうんですね。

だって、「聞こえない」ので、そもそも聴神経から、脳への伝わり方からして違うんですよ。そんなの無理じゃないですか~!

助けてもらえばいい!聞こえないことは他でカバーしよう!

私が大事にしてほしいのは、いかに周りにうまく助けてもらって聞こえない事をカバーすることができるかどうか。

お子さんが助けを求められるような環境を、そしてそういう言い方とかをもっと教えてあげるほうが後々将来につながると感じています。

聞こえない子が、聞こえる子と同じように「聞いて」「話す」のではなく
聞こえない子なりに、「聞いて」「話す」ことが、相手にちゃんと伝わればいいと思っています。

聞こえないならその部分は割り切ってしまって、違う方法を考える方が得策だと思います。

聞こえない子を頑張って聞こえる子に近づける…となると
絶望してしまうぐらい「あとちょっと」の差が大きいんですね。

そうじゃなくって

聞こえないならそれはしょうがない!
聞こえないことをどうやってカバーしていくか

 

聞こえないならその部分は割り切ってしまって、違う方法を考えていきましょう!

どんなふうにお願いすればいいのか。
どういったときに支援がほしいのか。
聞こえない子供はどういった場面が苦手なのか。
どうやってもらったら、少しでも周囲の会話がわかるようになるのか。
友達に気持ちよく協力してもらうためにはどうしたらいいのか。そういったことをもっともっと考えてほしいと思っています。

そういったことのヒントの一つとしてデフサポでは私の過去の経験や私が試行錯誤したことを伝えていきたいと思っています。

デフサポで目指すのは100%の聞こえではありません!!!

100%聞こえる子たちと同じように過ごすことは求めていません。

私だって今でも周りでお話ししていることが100%分かっているわけではありません。
口話ではどうしても限界はあります。

どれだけ上手に話せても、どれだけ上手に口話が読み取れても、100%聞こえる人とは同等になりません。
なじんでいる家の中ですら、分からない会話はたくさんあります。

交わされている会話内容をすべて知りたいのかというとそうではありません。
もちろん知ることができるのであればそれが一番いいのかもしれませんが…
私は疎外感を感じることなく、大事なことや楽しいことは共有してもらって楽しく過ごせれば充分だと感じています。

たくさん周囲の人に助けてもらって80%分の会話が分かればいいんじゃないかなーと思っています。

分からないことを助けてもらえるような言い方だったり、そういったスキルのほうが聞こえをよくすることより大事なことなんじゃないかと思っています。聞こえだけで100%目指すのは無理ですよ!何度も言うけど無謀すぎる!!だって努力して100%聞こえる子になるならそれはもはや聴覚障害じゃない!

デフサポで目指すのは『難聴のある子供たちがより楽しく人生を過ごす事!』

一度きりしかない人生。
とくに幼児期~学生時代は大人になってからよりも、本当にもっともっと濃い人生だと思っています。
そういった青春時代を「聞こえなくても」楽しく過ごせるのが一番じゃないかなーと思うわけです。

私自身の経験から、難聴のある人たちが楽しく過ごすための最低の土台として

・ことばの土台
・ソーシャルスキル
・コミュニケーションスキル

が大事だよ!ということを伝えていければと思っています。
もちろん、そのスキルを聞こえない子供たちに入れていくのが本当に大変なんですけどね~。笑
でも何をどうすればよいのか明確になれば頑張れると思うんです。

医師や言語聴覚士の方々がやってきていることとは別の切り口で、難聴者自身の視点からいろいろお伝えしていきたいとおもいますので、これからもお付き合い願います♪^^

最後に…

難聴の子供が大きくなって困っているとき、軽い感じで相談されるかもしれません。

それを「あなた自身の頑張りが足りないから!」で片づけないでください。
子供たちは日常生活でうまくいってるように見えても、悩みが軽いように見えても、親に言わないだけで、本気で悩んでいるんです。

難聴のことで悩んでいることを親に言えないって子供がたくさんいます。
それを知っておいてほしいと思います。

私自身、今でも手話を使えません。
口話メインで健聴者の世界で生きてきてるけど
やっぱり難しいところもたくさんあります。

聞こえる子たちと共に過ごす中で、聞こえない子供たちが悩むのは必然。
悩む内容は聞こえる親からすると「え!?こんなこと!?」と思うかもしれません。
でもその悩みを、否定だけはしないであげてくださいね♪

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