新生児聴覚スクリーニングでリファーになった後の精密検査について言語聴覚士が徹底解説!

新生児聴覚スクリーニングついて言語聴覚士が徹底解説!
の続きです。
新スクでリファーが出た後はどんなことをするのか…といったお話をしていきます。

精密検査の方法は?

ABR:聴性脳幹反応聴力検査

聴覚神経系を刺激することにより得られる脳波を記録したものです。
これは、眠っている赤ちゃんの頭部にヘッドホンと電極を装着し、「クリック音」という一定の音刺激を聞かせ、聴覚神経路である脳幹部から出る脳波をコンピュータで解析し音刺激への反応があるかどうかを判断する検査です。

【ABR検査時の赤ちゃんの様子】

【ABRの波形(上)と聴覚神経路(下)】

ABRは多くの場合、Ⅰ波~Ⅶ波が見えます。それぞれの波の起源が聴覚神経路のどこかもはっきりしているため、難聴の診断的価値が高いものです。これらの波の中でも特に第Ⅴ波が最も現れやすいため、ABR反応の有無の判断は第Ⅴ波があるかどうかを見極めることを中心に行います。

【ABRを実施する場合はお薬で眠ります】

ABRは神経からの反応電位を解析するものなので、電極が顔面の動きによる筋電位も拾ってしまうと、波形をうまくとることができません。また、慣れない場所で親御さんから離れて検査をするので、とても不安になり、泣いてしまうお子さんも多いです。

ですので、赤ちゃんのABR検査については、眠った状態をつくり、その間に検査をするのが原則です。トリクロールシロップというお薬とミルクを飲んで眠りやすくするのですが、より確実に検査できるよう、多くの病院では、お昼寝の時間頃に検査の予約を入れ、深い睡眠状態にもっていけるようにしているかと思います。

もしもお子さんが精密検査をうけることになったら、病院でしっかり眠れるよう、病院に来るまではお腹を空かせ、起きた状態にしておいていただけると良いでしょう。

【1度起きてしまうと、その日のうちに検査を終えることが難しい】

万全の体制を整える理由としては以下の通りです。できる限り1発で検査ができるといいですね。
・もう一度来院してもらうことになり、ご家族の負担が大きくなってしまう。
・薬は有害なものではないが、全く影響がないとは言い切れないもの。
・診断までの期間が長くなり、療育や補聴開始が遅れる可能性が高まる
・次の検査の順番が来るのが長いと数月先ということもあり、ご家族の不安が長引く

【ABRでみられるのは高周波数音(高い音)への反応】

ABR検査でお子さんに聞いてもらう音は、2000Hz~4000Hzくらいの音です。これは一般的には高音に分類されます。
ゆえに、ABR検査でわかることは「高い音あたりは少なくとも○○dBくらい聞こえていると思われる」あるいは「高い音あたりは聞こえにくいようだ」ということにとどまります。これはABRの限界で、お子さんの低い音への反応については言及できません
そこで登場したのが、次のASSRという検査です。

ASSR:聴性定常反応聴力検査

ASSR検査は、ABRと同様に脳波を測定・解析しておおよその聴力を推測できる検査です。ABRとの違いは、「周波数特異性」という特徴があることです。ABRでは2000Hz~4000Hzの高音部の聴力を推測する検査であると上述しましたが、ASSRでは250Hz~8000Hzの聴力を推定することができます。
これによってABRでは推定できなかった低音部の聴力像についてもある程度知ることが可能になりました。
同時に、被検者の低音~高音部全体の聴力図をほぼほぼ推定できるようになりました。
※る医師は、このASSRの登場によって小児難聴の歴史が変わったと言っていました。
上半分に表示されているのがASSRによって推定される被検者の聴力図です。
青色× →左耳

赤色○ →右耳

×や〇のついている場所を中心にして線が伸びていますが、その範囲に聴力があるだろうということを意味します。
このASSRの結果は、身体障害者手帳の「みなし申請」をする際にとても重要な情報になりますので、検査者も緊張感をもって臨みます。

OAE:耳音響放射

新スクで使用される自動OAE検査と同様のものです。
検査については、上記のスクリーニングの自動OAEの項を参照していただければと思います。

BOA:聴性行動反応聴力検査

これは、親御さんに赤ちゃんを抱っこしていただき、背後など「赤ちゃんから見えない場所」から音を出し、その音への反応をみる検査です。聞かせる音は、指こすり音や、鈴の音、紙を丸める音、太鼓の音、ラッパの音など様々です。

目的は音への反応の有無を見極めることですので、「この音でなければならない」という決まりはありません。家庭でも実施可能なので、1歳児検診のときの問診に含まれている場合もあります。
左:BOAに使用する物品の一部 右:BOAの様子

COR:条件詮索反応聴力検査

CORは、視覚刺激を利用して乳幼児の音への反応をみる検査です。

ABR・ASSR・OAEが他覚的聴力検査とされるのに対して、CORは自覚的聴力検査の一つと考えられています。

他覚的とは、被検者の意識とは関係なく、純粋に脳波などの客観的な指標によって聴力を推定するという意味で、自覚的とは、これとは逆に被検者の自発的な音刺激への反応をみて聴力を測定するということになります。

小さなお子さん(0~2歳くらい)や知的障害や認知症などで標準的な聴力検査に応答することが難しい場合は、多角的聴力検査とこのような易しい自覚的聴力検査の結果を組み合わせて手帳申請を行う場合が多いです。

 

客観的な結果と主観的な結果の整合性をみて、そこにズレが生じていないかなどをみるという意味でも、このような検査結果を総合的にみることがとても大切です。

CORは親御さんのお膝の上にお子さんを抱っこしてもらい行います。
写真にあるような装置を使って検査をします。
例えば、左から音を出して、反応があれば左の箱が光って中のおもちゃが見えます。
初めから音を出して検査本番というわけではなく、まずは箱からの光刺激をお子さんに見せて装置に興味をもってもらい、注意を引きつけてから検査を開始します。
■お子さんの反応の例
・首を動かして音の出る方向を見る
・眼球だけを音の方向に動かす
・方向は見ないけど、音が出た瞬間に眼球が動いて音を探す
・音が出た瞬間に笑い、音がやんだら笑いが止まる
・表情が変わる
・手足が微妙に動く
・ときには泣いてしまったり…

などなど・・・まさに十人十色です。

だからこそ学ぶことも見えることも多い、本当に大切な検査となります。そんな様々な反応を拾い上げて仮の聴力として記載します。これはお子さんの成長とともにかなり短期間で移り変わっていくので、少なくとも1か月に1回はCORを実施します。

聴覚検査のまとめ

これらの精密検査で反応なしとなった場合は、聴覚障害の疑いありとされ、療育開始の対象となります。
各検査には上記のような特徴があり、大きくはどれも聴力検査なのですが、それぞれに見ている側面は異なります。
精密検査では、このように様々な検査を組み合わせて、慎重により確実にお子さんの聴覚について評価するよう努めます。
また、お子さんの運動や認知発達の段階によっても反応の出方や結果の見方というのは変わってくるので、検査者から親御さんにどの点を見て反応の有無を判断したのかをご説明するよう心がけます。
もしも、検査を受ける機関で説明があまりなくて疑問なことがあれば、尋ねてみてください!
説明することは医療者の責任であり、知ることはお子さんと親御さんの大切な権利です。
何よりも、小さな情報の一つ一つを共有し、お互いに納得したうえで進む道を決めていかなくてはなりません。聴覚障害児とその家族と向き合いつつ、同じ方向を見て進むためには「信頼と協力関係」が不可欠です。その始まりがこの新スクにはあると考えます。
お子さんが難聴かもしれないという不安を抱えるのは、親御さんであれば当然のことだと思います。
その不安を消すことは私たちSTにはできません。
ですが、こういった検査を通して事実をお伝えすると同時に、では、どうすることがこれからできるのか、自分たちはどうする選択肢を持っているのかをお示し、親御さんがこれからお子さんを育てていかれるお手伝いをさせていただければと思います。

いしだあや

デフサポの言語聴覚士(ST)
専門知識を生かして、皆さんにとって不安なことや、ことばの教え方などのバックアップをします。

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