ろう者で、日本手話を第一言語とする柳さんと、聴覚障害児教育対談
公開日2019/09/25最終更新日2019/09/25
■対談記事
自己紹介
※以下動画と同じ自己紹介の全文です。※
========(ここから)
こんにちは
デフサポのユカコです。
今日は、あ〜とん塾にお邪魔にお邪魔させてもらっています。
(あれ、「お邪魔する」の手話あっている…?(笑))
(いいよ、いいよ(笑))
今日は、日本手話を第一言語とする柳さんにお話をお聞きしたいなと思っています。
(うん、うん)
よろしくお願い致します!
よろしくお願い致します!
柳さんの自己紹介をお願い致します。
私の名前は、柳 匡裕(やなぎ まさひろ)です。
よろしくお願い致します。
一般社団法人ありがとうの種という会社を経営しています。
現在、3つの事業を手掛けています。
一つの事業は、飲食事業です。名前が、「Sing with Me」です。手話ネームは、両手でOKを作って、相互にくるくると回します。
これは、目で生きるという意味が込められています。
へぇー!なるほど!
そのカフェは2店舗あります。
へぇーー!!!
二つ目の事業は、ここ。
あ〜とん塾!
そうそう、手話で生きる子どもの学習支援あ〜とん塾で、手話ネームが、指文字「あ」を滑らかに伸ばします。塾は自分の額を指します。それが、二つ目です。
三つ目が、日本手話普及事業で3つの大学の非常勤講師として日本手話を教えています。
え!初めて知った!!!へぇーーー!
はい、この3つの事業をやっています。
へぇー、ご紹介ありがとうございます。
========(ここまで動画のとおりです)
日本手話を第一言語とする柳さんと、日本語を第一言語にするユカコの、それぞれの考え
ユカコ
なにより日本で暮らすからには、筆記、口話にこだわらず、日本語ができることで、将来、選択肢が増えると思っています。
柳さんは手話で育ってきているじゃないですか?日本語についてはどう思いますか?
日本にいる以上、日本語は絶対必要だと考えています。
逆に、視野を広げて言えば、これからは中国語とかも必要だと思う。世界の人口とか考えると中国ってこれから大きくなるのもわかっていることでしょ。
柳さん
ユカコ
(このあと熱い中国語や人口拡大の談義が始まるので割愛・・w)
のちのち選択肢が増えるという点は、私も同じように考えています。
そのあたりは先程ユカコさんが話したとおりだと思う。
柳さん
ユカコ
私の場合は、聴覚活用だったり口話だったり、筆談でもいいしどんな手段でもいい。
やっぱり日本で暮らすからには現状の選択肢の多さで考えると日本語をしっかり獲得してほしい。日本語を第一言語レベルに使えてほしい(書記でもいいから)そのほうが現状だと、選択肢が広がると考えています。
ただ、私は第一言語を日本手話にしたほうが良いと思っている。
私の場合は、ろう者でしょ。どちらかというと、ろうの場合、聴覚機能は使えないから聴覚優先の人に合わせるっていうのは幅(キャパシティ)が狭くて大変。だって、口元を見て…読み取って…というのは正直しんどい。
でも逆に、聴者は、手話も口話もストレスなく使えるでしょ。聴者のほうが合わせることができる範囲は広いはず。
柳さん
ユカコ
要は第一言語がしっかり獲得されるかどうか、ですもんね。とはいえ…日本手話でそうできる環境は今はまだ少ないですよね。
でもあ〜とん塾はそれができる。
だって「聴者の方から、ろう者に合わせてきてよ!」と言いたい。私はね(笑)普段聞こえてて楽しているんだから手話くらい、子供のために頑張って覚えようよ!と。
柳さん
ユカコ
マジョリティ側が、合わせてきてよと!
でもホント、そういう世の中になってほしいですよね。
なので私としては、読み取る訓練だったりそんなところにエネルギーを使うよりも、ろう者が自然に身につけられる言葉を使いながら、ことばを覚えればいいと思っています。そのほうがストレスもなく、ことばも自然に覚えることができる。
例えば私の場合は日本手話を使い、あ〜とん塾の環境も視覚優位に整えました。
柳さん
↑あ〜とん塾はすべてが視覚的に見渡せるようになっている。
ユカコ
そして、生徒の両親には日本手話を当たり前のように使ってもらう。
「(親御さんが、)ええっ手話使うの〜!?」と思う気持ちは、当然わかるけれども、さっき話したとおり、親御さんが合わせてくれたほうが良い。
だって聞こえるんだからさ〜!普段聞こえる人たちは特に苦労せずに会話ができていて、ろう者は会話が大変なんだよ。合わせる幅の余裕は親御さんのほうが持ってるでしょ!
柳さん
ユカコ
うんうん。そういう考えもありますよね〜!
ただ、デフファミリーのように手話が第一言語の環境だったらできると思うんですが、一般家庭には厳しいところもありますし、日本語で思考しようと思うと日本語のレベルも大切ですよね。
ネイティブ並みに手話をつかってろう学校の先生とかが教育できるんだったらそれは第一言語として手話を獲得できるわけだから、すごく素敵だと思うんですよね。
あ〜とん塾では日本手話を先生たちが皆取り入れることで、しっかりと日々取り入れていく。家でも手話を活用してもらう。そうすることでしっかり手話を取り入れて、ろう者にとって自然なことば(手話)で日本語を勉強することができる。
柳さん
ユカコ
あ〜とん塾のようにネイティブレベルの先生が教えてくれるのはいいですね!言語ってどれもが中途半端になってしまうのが一番良くないと思っていて…。
ちなみに、結局は親御さんの考えや子供の性格、あとは家庭の方針なんかでどういう選択をしてもいいですよね。
どれが正解でどれが間違いってわけじゃないんですよね。どれも正解だと思います。
あ〜とん塾なら日本手話だし。”うちはこれにする!”ってのは大事だね(笑)中途半端にあれも、これも、あれも・・・ってなるよりはしっかりバシッと決めてその方針でやったほうが良いと思う。
だってさ、なにかものを買うときでも、そうでしょ。多機能であれもこれもなんでもできます、っていうよりも、シンプルに「うちの方針はこれ!」みたいに決まっている方が買いたくなるでしょ〜。
柳さん
(ここでバイクのハーレーのコンセプト等の話が始まるので割愛w)
ユカコ
聞こえる人と一緒に過ごす経験は大事。
ユカコ
聞こえる人(マジョリティ)の感覚を知れるというか。将来社会に出て仕事をする時に大事だなぁ〜とすごく思っています。
柳さん
ユカコ
例えば、ことばってリズムの要素も大きくて。いくら本が読めて、日本語がわかっていても、コミュニケーションってなるとまた難しい。
リズムって言うのはすごく大事だし、言葉ってリズムで成り立っているっていう話もよく聞く。リズムに乗れなかったら会話に入っていけないっていうのが現状。
会話ってリズムからも成り立ってると言われています。口話も、手話も。
柳さん
ユカコ
柳さん
ユカコ
それを考えると私は、柳さんのおっしゃるコミュニケーションのリズムが合わせられることよりも、ことばができることが大事だなって思ってて。
その上で、一定の判断基準として聞こえる人の感覚であったり考え方っていうのを肌感として知ってるのはすごく将来プラスになると感じてます。
柳さん
なによりも、自己肯定感が大事!
ユカコ
うん、日本手話を第一言語として育ってると、やっぱり聴者と関わることって少ないのは確か。私の場合、聴者の中に入って関わる経験は、ユカコさんと比べると少ない。
だから、例えば聴者の会話のリズムに合わせたりとかもなかなかできないし、コミュニケーションの輪の中に入れないって感じたり、疎外感を感じて苦しいことはもちろんたくさんあります。
ただ、私は「自分の周りの環境を作ればいい」というふうに考えていて。
柳さん
ユカコ
まとめると、自分の生きやすい方法を探して、それを目指すという考え方。
自分で、自分の居場所を作ったり、自分が自分でいられる方法を中心にしていけばいいなと思っています。
そうすれば合わせるストレスはないし、自分に合わせてくれる人たちと付き合っていけばいいし、すごく過ごしやすい。
柳さん
ユカコ
やっぱりどうしても仕事をしていても、「聴者に合わせられない自分ってダメだ…」みたいな感じで、自分を卑下してしまっていました。
どうしても聴覚活用なんてできないから、完璧に聴者に合わせることってできないし、口を読むのがうまいわけでもないし、やっぱりどうしても聴者の世界に入って、「自分だけわからない」「自分だけできない」という場面も結構経験することが多くって。そんな経験をしているうちに、自分の自信もどんどんなくなっていって。
柳さん
ユカコ
健聴者とでも上手に接しているイメージが私の中であります。そんな柳さんにもそういう時代があったんですね。
そこからだんだんまた、(自己肯定感が)上がったから、今はそうみえるかも。笑
柳さん
ユカコ
柳さん
ユカコ
聞こえる人の世界でうまくいく子もいれば、そうじゃない子もいて、そこはもう家庭の考え方だけじゃなくて本人の資質もあるし。
聞こえる世界にも行けると選択肢は増えるかもしれませんが、居心地のいい場所は人によって全然違って当たり前ですよね。
そういえばね。私は小さい頃、発音訓練を受けていたことがあって、自分自身は、その中でわりと発音ができていた方でした。
そうすると、周りの人から「上手に話すねえ、発音がきれい!」ってすごく褒められていた。
でもそれって、今思えば、聴者の世界に合わせることが、基準になっていて、その基準で褒められているわけだよね。
でも、その時は自信満々で、「発音も上手いし、聴者に近い!」ということがすごく自分にとって良いことのように思っていました。
でも、聴者の世界に入ってみると・・・あれ?会話をしていても何を言っているのか分からない…。
会話のリズムが全然合わないし。「あれ…?自分は聴者に近いはずなのに!なんで?」
みたいな経験があった。それで、自信もどんどんなくしてしまうわけ。
そういうなんていうか、周りからのイメージの植え付けみたいなのはあるよね。聴者に近づくほどいい、みたいな。でもそうではない。
柳さん
ユカコ
私自身、聴者の世界で暮らしていて思うのですが、聴者になるのは100%無理なんですよね。
だからどっかで割り切ったり、聞こえないことを表現していくのは大事というか。
あとは、根底の考えとして聴者に近づくことが良いんじゃなくって、対等な立場に立てるのが大事だと思っています。
柳さん
手話を第一言語としながらどうやって日本語を習得したのか?
ユカコ
どうやって覚えたのかぜひ教えてください!
やっぱり本さえあればことばは大丈夫と思うところはある。
だけど高校に上がれば、本だけでは足りない。
大きくなるにつれて、ディスカッションする場面が増えて、必要になってきますよね。
柳さん
ユカコ
柳さん
ユカコ
プラス面は、日本語の文法をまぁまぁ身に付けることができたこと。でもその逆にマイナス面だと感じるところは「生きている言葉」が学べないことかなあと。
そういう生きていることばの使い方は、やっぱり本から学ぶことは難しい。生きていることばって例えばその場面場面で言葉をはめ込んだり、相づちを打ったり突っ込んだり。他にも、議論、その空気の温度差、などいろいろありますよね。喧嘩の仕方とかも、難しい。
柳さん
ユカコ
喧嘩って生きたことば多いよね。
柳さん
ユカコ
そっちは言葉というよりもコミュニケーションの域ですよね。
手話もそうで、手話を一個一個覚えて、完璧!バッチリ!と思っても、その手話で会話に入ることができないこともすごくたくさんある。それはなんでかというと、言語によって会話のリズムが違うから。会話のリズムが違うと結局コミュニケーションは取れない。単語や文法を覚えてても駄目だよね。
柳さん
ユカコ
だから、自分が聴者との会話に入るための方法は、自分が主導権をにぎってしゃべるという感じ。聴者主導になると話者交代とかついていけなくて、せいぜい「そうですね〜」って言うのが精一杯。主体的になって自分がいっぱい話題提供をしたり、自分からどんどん動くしかない。
受動的になるともうアウトですね。
柳さん
ユカコ
何よりも子供に合った方法を選ぶのが大事!
ユカコ
選択肢は多いほうが良い。デフサポも、あ〜とん塾もその選択肢の一つ。
最後は子供それぞれにあった方法が一番ですよね。
柳さん
ユカコ
今日は長いお時間ありがとうございました!!
本当は、その他にもいろんな話をして、ほんっとーーに面白い対談だったのでぜひぜひもっと・・・!と言いたいところなのですがボリュームがかなり多くて。笑 書ききれないので今回は割愛します!笑
そして真面目な柳さんのお話を、初めて聞きました。笑
オフショット①二人で考えて、最後のまとめを頑張ったつもりだけどそれまでに話し盛り上がりすぎてちょっと疲れてる感があるww
※字幕ありません!!
オフショット②盛り上がってるところ載せたいけど、ちょっと編集が間に合っていないw
素敵なお話をありがとうございました!!