今日は、聴覚障害児のことばがでるまでの1年間、できることはどんなことか、というお話です。
「補聴器を起きている間、ずっとつけていられる」ということが最優先課題とはわかっているけれど、それ以外に何をすればいいのでしょう。という質問をいただくことがよくあります。
言葉が出ないことで悩んでいたり、難聴の赤ちゃんに何をしたらいいのか悩んでいる親御さんがたくさんいらっしゃると思います。でも、ちゃんと言葉が出るまでの間にもできることがたくさんあります!そんなに難しいことではないので是非チャレンジしてみてくださいね♪
歌を歌うこと、歌うようにたくさん話しかけること
赤ちゃんは、音楽や歌が大好きです。
いつも家族が歌っている歌ならば、歌詞の内容がわからなくても、歌のメロディーからどんな歌を歌っているかわかるようになってきます。
つまり、ことばを認識できる以前に、赤ちゃんは音の抑揚をとらえることができるのです。例えば、歌が聞こえたときにだけ体を動かして踊るようになれば、音声と歌の区別ができているということになります。
とんとんとんとんひげじいさん」と歌い始めるだけで、それらしくトントンと手で身振りをし始めたら、「ひげじいさんの歌を認識できている」ということに
なります。これは、聴覚活用の芽生えの指標ともなりうれしい出来事です。
育児語とは・・・?
「〇〇ちゃ~ん、おむつかえるよ~!」といいながら赤ちゃんに話しかけている親御さんがいたら、それは育児語です。
抑揚のある、母音を伸ばした感じの話し方です。大人だけでなく、子どもでも小さい子どもに対してはそういう話し方の方が好まれるというのを認識しているのでしょう。兄弟姉妹も育児語のような話しかけをしていませんか?
身振り手振りを入れるのももちろんOK
もちろん歌う時など、どんどん身振り手振りを添えてあげてください。聴覚だけで理解できているかを確認したいというときは、別ですが。
日常の生活の中でも、自然な身振りであれば取り入れてもらっていいと思います。これも育児語と同じで、世界共通で子どもが小さいうちは身振り手振りが多い時期があるでしょうし、自然体でいいのでは?と思います。
聴覚活用メインでも、こどもが音声だけで理解できないときは、ジェスチャーや身振りで提示ができる方法も取り入れています。
例えば、「本を開けて」と聴覚だけでいっても理解してもらえない時は、本を開けることをしぐさで伝え、そのあと、また「本を開けて」と聴覚だけで提示するという方法です。聴覚だけで理解することが力と自信がついてきたら、ジェスチャーは不要になっていくでしょう。
育児語は世界共通?
ヒトは生まれながらにして、歌や抑揚のあることばに興味をもつといわれており、母親は歌うだけでなく歌うような感じの育児語で赤ちゃんに話しかけるということがいわれています。
これは、どの文化や言語の人でも自然とやっている世界共通の技のようです。音の抑揚に興味をもち、初期の頃から抑揚をとらえることができる赤ちゃんのことをまるで人類は古くから知っているかのようで、すごいことですよね。
育児語は子供が1歳をすぎてくると使わなくなってくる!
実は、育児語は、子どもが1歳を過ぎたあたりから使わなくなり始めるそうです。育児って子どものお世話だけでも大変なのに、育児語を使っている時も相当のエネルギーのいることですよね。
これは勝手な想像ですが、1歳を過ぎると、エネルギーを使うほどの効果が得られなくなるから、親御さんは自然に育児語を使わなくなるのかな、と。
つまり、1歳の頃というと、歩き始めたり、初語が出始めていて、親にとっては子どもの成長を感じ感動する毎日ですが、ことばの理解の面でも大きく育ち、音声の抑揚があまりなくともことばを理解できるようになってくるからなのではないかと想像しています。
そもそも育児語の話し方ってどんな特徴があるの?
赤ちゃんに話しかけている母親が、どんな風に話しかけているのか気にとめてみると。。。
①大げさに歌うような抑揚のある声で話している
②少し高めに話している
③短めの文章が多い
④繰り返しが多い
⑤キーワードを大きく強調している
⑥少しゆっくり
⑦幼児語や擬音語が多い
このような感じですね。特に意識しないで、自然とやっているという方は多いのではないでしょうか?
難聴児には育児語の話し方が有効!
なぜ、ここまで熱く育児語を語っているかというと、難聴児にとっても育児語の話し方がとても有効といわれているからです。
ちなみに、あくまでも先程の1歳になると使わなくなるというのは(聴児の)目安です。常に聞こえている人の話なので、例えば人工内耳の音入れをしてもらって、初めてスピーチバナナ音声のアクセスができるようになったこどもにとって、耳年齢は限りなくゼロに近いですよね。
なので子どもの年齢が実際は1歳を過ぎていたとしても、少なくとも初語が出るまでは、育児語で話してあげましょう。
矢崎 牧 先生