さて、臨床心理士のおおえさんから臨床心理士、公認心理師等についてお話をしてもらいました!検査に対しての心構えや、心理士について知れることがたくさんあるのでぜひぜひ読んでみてください。
臨床心理士や公認心理師などの『心理職』といわれる職種、ご存じでしょうか?あまり馴染みのない職種だと思います。
私の体験談ですが、「臨床心理士です」と自己紹介したら、大抵「???」という顔をされます。そして、「学校のスクールカウンセラーとか、ああいう仕事」とイメージしやすいように補足すると、「心を読まれそう」という返事が返ってくることが多いです。そのたび、人の心がそんなに簡単に読めたら苦労しないよ…と心の中で呟いています。
心理士はどこにいるの?
さて、この『心理職』について、簡単に説明したいと思います。まず、『心理職』は、いったいどこにいるのでしょう?
主な勤務先としては、以下のような場所が挙げられます
・教育分野(学校など)、
・医療・保健分野(精神科の病院・一般病院・市町の保健センターなど)、
・福祉分野(家庭児童相談センター、児童養護施設、女性相談センター、療育センターなど)、
・司法・矯正分野(家庭裁判所、少年鑑別所、刑務所、犯罪被害者センター、警察の科学捜査研究所など)、
・産業精神保健分野(ハローワーク、障害者職業センター、企業など)、
・学術・研究分野(大学、研究所など)
また、『心理職』といわれる職種の人がすべて、臨床心理士や公認心理師という訳ではありません。今現在の日本には、色々な種類の心理士が乱立状態なのです。そして、その中でも人数が多いのが、臨床心理士となります。臨床とは、「現場で人と接する」という意味です。
臨床心理士と公認心理士の違い
臨床心理士は民間資格なのですが、受験資格を得るためには、指定の大学院を修了する必要があるので、資格制度ができる前から仕事をしていた方を除いてほぼすべての人が臨床心理学という学問や、それに関連したことを学んでいます。
また、公認心理士は、日本で初の心理学系の国家資格になります。歴史は浅く、平成30年9月に第1回の試験があったところです。公認心理師は、大学の養成学部と養成大学院を修了するなどの一定の条件で受験資格が得られる事になっていますが、養成校を修了した人がまだいないので、実務経験で受験・合格した臨床心理士が約9割を占めている状況です。
聴覚障害児が臨床心理士・公認心理師などの『心理職』と出会うこともある
聴覚障害のお子さんを育てている中で、臨床心理士・公認心理師と出会うことがあるとすれば、それはどこでしょう?
乳幼児期では、市町の保健センターが実施している発達相談や、子育て相談などで『心理職』と出会うことがあります。発達検査を受ける時に、検査をしている人が『心理職』です。
学齢期には、学校にいる「スクールカウンセラー」が『心理職』となります。その他には、「教育相談員」なども『心理職』が行っている場合もあります。
病院では、「カウンセリング」や「知能検査」「性格検査」などを行っているのが『心理職』です。また、民間のカウンセリングルームなどもあります。
企業に勤めると、「相談室」などに『心理職』がいる場合があります。また、職場の職員のメンタルヘルスの向上・悪化予防のために、従業員支援プログラム(EAP)を外注で利用している企業もあります。そこで働いているのも多くは『心理職』です。
発達検査・知能検査で気をつけるポイント
発達検査と知能検査の違いについて質問される事があります。
細かい違いはありますが、基本的には「その検査から見えてくる、子どもの能力を測っている」という事になります。発達検査ならば発達年齢や発達指数(DQ)が、知能検査ならば知能指数(IQ)が算出されます。使い分けとしては、運動面の発達も伴う乳幼児期は発達検査(新版K式など)、学齢期以降は知能検査(WISCなど)という事が多いかと思います。また、検査を行う時に保護者が同席しても良い場合もありますが、同席NGの検査も多いです。
さて、発達検査や知能検査の検査結果がでると、書かれている数字を見て一喜一憂してしまいますよね。検査結果で話された事や書かれている内容よりも、ついつい数字に目を奪われてしまう事があると思います。もちろん数値も大事ですが、もっと大事な事を見落としていませんか?
発達検査や知能検査で出てくる数字は、検査の出来栄えを平均した値です。また、その日、その場所で、検査をした『心理職』との間の中で行われた検査結果なので、明日になったらちょっと違う結果になっているかもしれません。何度か検査を行って経過を見ていく必要があるのはその為です。(その日によって5デシベル程度なら変動するところや定期的に測定するところなど、聴力検査と似ていますね)。ですので、今の子どものおおよその傾向が分かるという事は事実ですが、数値を意識しすぎるのは考え物です。
大切なのは検査でわかった苦手な項目や間違え方
それよりも大切なのは、どの項目が苦手だったのか?どういう答え方をして間違ったのか?という事です。そこから、子どもの今のつまづきや、次のステップにつなげるためのアイデアが見えてくるからです。
検査の数値は、正答と誤答の数を計算して出されているので、数値だけ見ても、どこでどういう間違いがあったのかが分かりません。例えば、〇×〇×という結果の子どもと、×〇×〇の結果の子どもは正答した問題が真逆ですが、同じ数値になります。本来ならば、最も知りたい情報であるどの項目をどう間違ったのか?という事が見えないままで終わってしまうのは非常に勿体ないと思います。検査結果を教えてもらう時に、そういった所を意識して質問したり、書面を読んだりしてみてくださいね。
最後に…時折、前にやった検査を覚えていて、検査項目が正解になるように練習・暗記して来られる方がおられます。検査で測っている項目はあくまで代表項目なので、練習したり暗記したりして良い結果になったとしても、本来の力までレベルアップしている訳ではありません。項目が正解するように練習・暗記するのではなく、苦手な部分を知って、日常生活の中で全体的な力のキャッチアップをしていく事が大切です。そうした取り組みが効果的だったかどうか振り返るツールとして、検査を利用してもらえればと思います。
心理職の聴覚障害の理解について
これまで、臨床心理士・公認心理師などの『心理職』について書いてきましたが、実は『心理職』の大多数は、聴覚障害児者の育ちや、困りについて、ほとんど知りません。
学校で学ぶカリキュラムで聴覚障害について詳しく学ぶことは稀です。逆に、発達障害については臨床場面で出会うことが多いことや、療育・特別支援教育などで注目されていることもあり、学ぶことも触れることも多いです。
聴覚障害児の育ちをあまり知らないまま、臨床現場で会うと、「ことばの遅れ」は聴覚障害の為かな?と予想はできても、ことばを聞き逃し、聞き漏らしていることの弊害から来る色々な事象については思いが及ばないことがあると思います。(例えば、ことばの理解が表面的になってしまいがちなことなど)
聾学校やSTさんに聞くと聴覚障害あるあるなエピソードが、『心理職』が聞くと「発達障害」に思えてしまうなんてことも…。もちろん、そうでない場合もありますが。
おおえかおり
ただいま、子育て奮闘中!!年中の息子は、先天性感音性難聴(中度)。
「ことば」→「伝わる言い方」→「相手に合わせてことばを選ぶ」。聞こえない・聞こえにくいからこそ丁寧にステップアップしていきたいですね!!
先輩ママ達と、成長した難聴児さんの姿に、いつも支えてもらっています。