このページを見ておられるのは、お子さんの聞こえに問題があるのではないかと不安な親御さんでしょうか。
呼んでも振り向いてくれなかったり、聞き返しが多かったり、ことばをなかなか話し始めないなどなんだか聞こえていないのでは?と心配…、な方にどうやって難聴をチェックするかをお伝えします!
①簡易的にできる1歳半ごろまでの難聴チェックの方法
家族だからこそ難聴に気付く!
病院ではうまく検査できなくても、毎日一緒に過ごしているご家族だからこそお子さんの聞こえの悪さに気づいてあげられる可能性があります。
まずは毎日の暮らしの中で「これはできるかな」「こちらはどうかな」と試してみてください。
お子さんの感覚や体を動かす能力は生まれてから少しずつ発達していきます。そのため、月齢によってできることが変わります。下に月齢ごとにご家庭でもできるチェック方法を一覧にしてみました。お子さんに月齢にあうものを選んで試してみましょう。そして、3ヶ月以上の遅れがあるように感じたら、すぐにかかりつけの先生に相談してみてください。
生後2ヶ月まで: | ・突然の音にびくっとして、手足を伸ばしたり、目をぎゅっと閉じたりする。 ・眠っているときに突然大きな音がすると目を覚ましたり、泣き出したりする。 ・近くで声をかける(またはガラガラを鳴らす)とゆっくり顔を向けることがある。 |
3~4ヶ月頃: | ・ラジオやテレビの音、コマーシャルなどに顔や目を向けることがある。 ・名前を呼ぶとゆっくりとではあるが顔を向ける。 ・人の声 (特に聞き慣れた母親の声) に振り向く。 |
5~7ヶ月頃: | ・ふいの音や聞き慣れない音、珍しい音の方にはっきりと顔を向ける。 ・話しかけたり歌を歌ったりしてあげると、じっと顔を見る。 ・声をかけると、意図的にさっと振り向く。 |
8~9ヶ月頃: | ・外のいろいろな音 (車や雨、飛行機など) に関心を示す。 ・隣の部屋で物音を立てたり、遠くから名前を呼ぶと、はってくる。 ・音楽を聴かせたり歌を歌ってあげると、手足を動かして喜ぶ。 |
10~15ヶ月頃: | ・「ママ」「まんま」「ねんね」などをまねて言う。 ・簡単なことばによる言いつけや要求に応じて行動する。 ・目、耳、口など体の部位をたずねると、指さす。 |
新生児スクリーニングとは
新生児聴覚スクリーニング検査とは、生まれたばかりの赤ちゃんに生まれつきの難聴の可能性があるかないかの2つに分けることです。
おおざっぱな検査なので精度(正確さ)はそれほど高くなく、「要再検査」と言われた人が100人いたとすると「実はなんともなかった」という人が 40人もいる、くらいの精度です。赤ちゃんの耳の中に羊水が残っていた、検査機器がうまくあたっていなかった、など誤判定の原因はさまざま。
詳しい事はこちらへ!→「新生児聴覚スクリーニング」
生まれたときは聞こえていても、後から難聴になることもある!
一方で難聴は、生まれた時はなんともなくても、おたふくかぜや風疹のように誰でもかかる可能性があるウイルス感染をもとに後からなることもある身近なものです。
また、行われたスクリーニング検査によっては、その検査では見つけにくい難聴が見逃されるケースもあります。例えば、検査が簡単に行えることから多くの産院で採用されている耳音響放射スクリーナー (OAEスクリーナー)には「耳から脳へ音を伝えるルートに問題があるタイプの難聴」を見つけにくいという欠点があり、難聴が見逃されてしまうことがあります。
②早期発見が重要!幼児の難聴チェックリスト
途中で聞こえなくなっているかも!?
生まれつきの難聴のほか、繰り返すウイルス性中耳炎や突発性難聴が原因で途中で聴力を失うこともあります。
またおたふく風邪では片側だけ難聴になるムンプス難聴が 200-1000人に1人の率で発症しますが, 片側が聞こえるだけに気づいてあげにくいと言われています。
もし「うちの子、なんだかあまり聞こえてないような気がする…」と思われた時は、以下の項目で少しチェックしてみてください。
複数当てはまる場合は病院などで検査をしてみることをおすすめします。
実際にチェックしてみよう!
□ 話し声が大きい
□ 聞き間違えが多い
□ 音の出るおもちゃに反応しない
□ 話している途中でよく聞き返す
□ 車や自転車の音に気が付きにくい
□ テレビやゲームの音量が常に大きい
□ 後ろから声をかけても振り向かない
□ 片方の耳側だけ、呼びかけても反応がない
□ 日常的に鼻づまり・鼻すすり・口で息をしている
また、乳幼児健診、1歳半検診、3歳児健診はぜひ受けてください。
難聴が疑われる場合には、専門機関や聴覚相談の紹介をしてもらえます。
1歳半検診・3歳児検診での聴力検査
それぞれの検診で行われる聴力検査の詳細が日本耳鼻咽喉科学会のHPに詳細があります。気になる方はぜひコチラもご覧ください。
・1歳半検診で行われる聴力検査
・3歳児検診で行われる聴力検査
③子供の難聴、早期発見が必要な理由
子どもが聞こえに問題を抱えていたら、なるべく早く見つける方がいいと言われます。
ひとは、ことばで意思疎通をする
一番大きな理由は、その子にどんなことばをプレゼントするかを決めるためです。ことばはその子がその後の人生を生きる力をつちかうものです。
同じものを食べて「おいしいね」と言い合うにも、大切な人に気持ちを伝えるにも、勉強をするにも仕事をするにも私たちはことばを使いこなして、他の人とやりとりをします。
ことばの習得順と語彙数
もし、あなたが聞こえる方であったなら、ことばはきっと
①聞く
②話す
③読む
④書く
の順番で身につけられたことでしょう。
小学校入学頃には、2000~4000語くらいのことばが身についていると良いとされています。
それは「読む・書く」を通して「考える」ための基礎となることばの数で、生活を通して身につけていきます。でも、聞こえが不十分な子には「生活の中で音のシャワーを浴びるように聞いてきたことばの中からで自分にとって一番いいたいことを真似して口にする」という聞こえる人と同じやり方でことばを身につけることは工夫しないと難しくなってしまいます。
人工内耳や補聴器の装用は早いほうがいい!
医療者が早期の補聴器利用や人工内耳の手術を勧めるのには理由があります。それは脳が怠け者だから。脳は、生まれた時には何にでも反応してしまう敏感な状態なのですが、これは大切なこと、これは無視しても大丈夫なこと、と毎日いろんなものを「反応すべきもの」と「反応しなくてもよいもの」に選び分けながら「必要ないものには反応しない仕組み」を作っていきます。
【実際にイメージしてみよう】
社会人になりたての頃には全てに注意を向けて緊張して家に帰るとどっと疲れていたのが、2-3年もするとそれが普通になって精神的な疲れが減っていきますよね?
その人に合わせてカスタマイズされ、必要なものだけに反応してムダに疲れることを防ぐわけです。同じことが聞こえについても言えます。
音の刺激をいれないと神経回路が違う回路に置き換わる
本来なら「聞いた音をことばに変える」ために使われるはずだった神経回路は、ずっと使われないと閉じてしまい、代わりにその子が最も使っていた「見たものをことばに変える」ための回路に置き換わっていくのです。
そのためことばを獲得する時期を過ぎて手術をしても、音は感じ取れてもそれをことばとして理解することが難しくなります。入ってきた音をことばに変える回路を育てるためにはできるだけ早く音と一緒になったことばの刺激を入れることが必要なのです。
手話で育てるから難聴かどうか分からなくてもいい!
「もし難聴だったら音を頼りにしないで手話でやっていくことにするから難聴かどうかわかるのは遅くてもいい」と言えるでしょうか?
やはり、その場合も早く見つけてあげる方がいいように思います。ひとつには、ことばを最も覚えやすい時期というものがあるからです。その時期にことばの学習が進むようにしてあげたい。
そう思うと、聞こえないお子さんは「生活の中でなんとなく耳からことばが入ってくる」ことが少ないため、周りがことばの発達のために意識してサポートをする必要があります。ことばが口から出て来るためには、その何倍もの「聞いてわかる」ことばの種が体に詰まっている状態にしてあげる必要があり、そのために手を貸すイメージです。
軸になることばが必要(第一言語)
日本語でも、手話でも、どちらにしてもなにかひとつその子の軸になることばを身につける。それはジェスチャーでなんとなく通じるとか、家族内でなら通じるといったものではなく、新聞記事の日本語のように「て・に・を・は」がはっきりわかり、「私はこういう理由であなたにこうしてもらいたいと思っている」と誰が聞いてもその子が言いたいことを理解できるようなことば、社会で働くために必要となることばのことです。
そういうことばの基礎を身につけるには 5~7年かかります。どんなサポートがその子とそのご家庭にとって一番相性がいいのか、思い悩む時間も含めて考えると少しでも早くスタートすることをおすすめします。ベビーサイン、キュードスピーチ、指文字などサポートの方法はいろいろあります。
一人で悩まないで相談を!
ひとりで悩まないでください!
デフサポはもちろん最大限サポートしていきますし、
医師や言語聴覚士、専門家の助けを借りながら、一緒にお子さんのことばを育てていきましょう!
④何個当てはまる?乳児の聴覚発達チェックリスト
このチェックリストは、お子さんの聞こえの発達をチェックするためのものです。
生活の中のいろいろな音に対して、お子さんがどのように反応するかを、3日間折にふれて下記のチェック項目について観察し、確実に反応があったものには○をつけてください。
お子さんの月齢とその一ヶ月下の月齢のチェック項目も含めて○が2つ、あるいはそれ以下の場合を要注意としています。
【3ヶ月頃】
( )大きな音に驚く
( )大きな音で目を覚ます
( )音がする方を向く
( )泣いているときに、声をかけると泣きやむ
( )あやすと笑う
( )話しかけると、「アー」「ウー」などと声を出す
【6ヶ月頃】
( )音がする方を向く
( )音が出るおもちゃを好む
( )両親など、よく知っている人の声を聞きわける
( )声を出して笑う
( )「キャッキャッ」と声を出してよろこぶ
( )人に向かって声を出す
【9ヶ月頃】
( )名前を呼ぶとふりむく
( )「イナイイナイバー」の遊びをよろこぶ
( )「ダメッ!」「コラ!」と叱ると手を引っ込めたり、泣き出したりする
( )おもちゃに向かって声を出す
( )「マ」「パ」「バ」などの音を出す
( )「チャ」「ダダ」などの音を出す
【12ヶ月頃】
( )「ちょうだい」「ねんね」「いらっしゃい」などのことばを理解する
( )「バイバイ」のことばに反応して手を振ったりする
( )大人のことばをまねようとする
( )意味のある言葉ではないが、さかんにおしゃべりする
( )意味のある言葉を1〜2つ言える (食物を「マンマ」、お母さんを「ママ」等)
( )単語の一部をまねして言う
【1歳6ヶ月頃】
( )絵本を読んでもらいたがる
( )絵本を見て知っているものを指す
( )簡単ないいつけがわかる。「その本を取って」「このゴミを捨てて」など
( )意味がある言葉を1つか2つ言える
( )意味がある言葉を3つ以上言える
( )絵本を見て知っているものの名前を言う
(*)田中美郷,進藤美津子,小林はるよ,他: 乳児の聴覚発達検査とその臨床および難聴児早期スクリーニングへの応用。Audiology Japan 21 : 52―73,1978 を改変
⑤難聴の可能性があれば、すぐ病院へ
チェックリストで試してみた結果、実際の月齢より3ヶ月以上の遅れがあり、やはりこの子は聞こえが悪いかもしれない…と思われた場合はすぐ病院へ!
どんな病院へ行けばいいの? と悩まれた場合は、かかりつけの小児科・クリニックから難聴外来のある大学病院に紹介状を書いてもらうことをおすすめします。子供の聴力検査は難しく、慣れている病院でないと正しい結果が出ないこともあるためです。
デフサポは教材やカウンセリングを通じてサポートをしていきます。
心配なことがあればお気軽にお問い合わせください。
古村先生(ST)