聴覚障害児(難聴児・ろう児)のきょうだいの事が丸わかり!SODAの会の代表が徹底解説!

執筆者紹介

藤木さん(SODAの会代表)

3歳下に聞こえない弟がいる「聞こえないきょうだいをもつSODAソーダの会」代表
弁護士として家族関係を専門、聞こえない弁護士とは仕事仲間です。
筑波技術大学(聴覚・視覚障害学生のための国立大学)で法律学を教えています。

きょうだい児とは?

「障害児(者)のきょうだい(兄弟姉妹)」を指します。

ここでの”障害”は病気等も含む広いもので、種類や程度、診断の有無等は問いません。これからお話するSODA(ソーダ)もきょうだい児(者)に含まれますね。
私は、SODAの会の他にきょうだい児(者)の会やサイトの共同運営にも関わっていて、これまで数百人のきょうだい児(者)、SODAに出会ってきました。

SODA(ソーダ)とは?

聞こえない子どもと一緒に育っている子ども、一緒に育った大人

「聞こえるきょうだい」つまり、「聞こえないきょうだいを持つ聞こえる人」を指す言葉です。「聞こえない子どもと一緒に育っている子ども、一緒に育った大人」ですね。

聞こえない人の聴力や補聴手段(補聴器・人工内耳など)、コミュニケーション方法(声・手話など)は不問です。私個人としては、SODAとしての共通点を土台に、違う点も大切にしていきたいと考えています。

「聞こえないきょうだいをもつSODAソーダの会」を立ち上げる時は、「聞こえない・聞こえにくい・難聴・ろう・聴覚障害・デフ」など、さまざまな言葉があって迷ったのですが、子どもでも誰にでもわかりやすいように「聞こえない」を選びました。

SODAの「S(シブリング=きょうだい)」の意味は?

SODA(ソーダ:Siblings of Deaf Adults/Children)はアメリカ由来の言葉です。

Sは「Sibling(シブリング=きょうだい)

これから広まっていくと思いますが、「Brother(兄弟)」や「Sister(姉妹)」と違って、男女や上下もありません。今の時代に合った言葉ですよね。 

多くのきょうだい児・SODAと話して感じているのは、「聞こえる・聞こえない」、「障害」などの前に、親御さんや周囲の大人、ひいては社会の「兄弟姉妹」に対する意識の影響がとても強いなということです。

みなさんも「お姉ちゃん・お兄ちゃんでしょ」、「弟・妹でしょ」、「ひとりっ子だから」等の言葉に、多かれ少なかれ複雑な思いをした経験があるのではないでしょうか。

 ちなみに、私は、聞こえる・聞こえないの前に、「お姉ちゃんって損!」だと思っていましたが、よくよく思い返すとお姉ちゃんの役得で弟に「頼み事」をしたり(弟、ゴメンナサイ!)もしていました。なので、優しい性格の弟は口には出さないけれど、弟のほうも「弟なんて損だ!」思っているかもしれません…。

SODAは全国に何人ほどいるの?

実はわからないんです。
ただ、推測ですが、聞こえない子どもは約1000人に1人=約10~12万人なのと、人口調査上のきょうだい数の平均が2人前後なので、そこから概算して「聞こえない子どもと一緒に育っている子ども、一緒に育った大人」も同じく約1000人に1人、10万~12万人程はいるのではないかと思います

※参考までに、国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、結婚後15年~19年の夫婦の平均子ども数(きょうだい数)は、1940年は4.27人、1972年に2.20人となった後は2005年まで2人台、2010年、2015年は1.9人台となっています。

「SODA」という言葉やSODAの会がある意味は?

「SODA」という言葉や会があることで、「SODAである自分自身の気持ちや課題・ヒントがわかった!」、「(同じSODAや親の立場で)話せる仲間ができて楽になった!」「もっと早く知りたかった!」という声が多いです。ただ、SODAといっても千差万別ですし、SODAという言葉や会は嫌だ・(今は)必要ないと感じる人もいます。
私自身も、大人になったSODAの立場から、子育て中の親御さんへの伝え方は試行錯誤中ですので、ご感想、ご質問等があればSODAの会にいただけるとありがたいです。

SODAの悩みや課題って?親にはどうしてほしいの?

悩みと課題は強みと裏返しの関係、フォローが大事!

SODA同士では、家族のコミュニケーションや生活、音に関してのあるある体験で盛り上がったりします。聞こえる・聞こえないの違いがとても身近にあって、それをタブー視しないところや、配慮はするけれど特別扱いはしないのがSODAの特色かもしれませんね。

また、「これってSODAの強みかもしれない?」と、私自身が他のSODAを見て感じるのは、説明がわかりやすくて、伝わらなくても別の言い方や方法で伝えようとするところ、会話に参加していない人に気付いてさりげなく声をかけるところ、周囲にまんべんなく配慮する絶妙なバランス感覚やすごく気を遣って場の空気を敏感に察知して調整するところ、頼まれたら頑張ってしまうところなどです。

でも、上に挙げたようなことは、強みであると同時に悩みや課題になってしまうかもしれません。互いに裏返しの関係にあるとも言えますね。悩みや課題への適切なフォローが強みにつながっていくと思っています。

そのままの存在を認めてほしい!

 きょうだい間の平等については親御さんも悩まれている方が多いと思いますが、「家族」は、聞こえないお子さんにとってもSODAにとっても最初に接する「社会」なので、「どちらのお子さんも平等にそのままの存在として認めてほしい」というのが大人になったSODA・聞こえない大人から一番お伝えしたいメッセージです。

一番多いのは聞こえるから!聞こえないから!というきょうだい間の不平等・不公平

 たとえば、SODAがすごく頑張ってテストで90点を取ったのに「聞こえるから」当然もっと頑張れとされてしまう一方で、70点の聞こえないきょうだいが「聞こえないのに」頑張ったと褒められたとしたら、どちらの立場でも微妙ですよね。どちらも、頑張ったことを褒めてほしいですよね。また、叱る時も同様だと思います。

通訳・伝達係になるきょうだい児

コミュニケーション上の配慮・調整は必要でも、きょうだい間は平等なのが公平ですよね。SODAが聞こえないきょうだいを「聞こえるから」助けてあげるのが当たり前というような一方的なきょうだい関係ではなく、双方向の関わりであってほしいです。

また、SODAがいわゆる”通訳”、伝達・仲介係になる例も多いですが(特にお父さんや周囲の大人との間で)、子どもには負担が大きいこともあります。家族のコミュニケーションは、家族全員で工夫しながら、作っていくことが大切だと思います。

聞こえるきょうだい児を気にかけていることが伝わることが大切

他の悩みや課題でよく挙がるのはこのような事例です。

・親と聞こえないきょうだいが不在がちで、寂しさを我慢したり別の形で不満を示したりする

 

・耳のことや療育についての説明がないので不安、または親が障害や療育の話ばかりで負担


・親や聞こえないきょうだいの大変さやストレスを感じ取って不安定になったり、自分自身のSOSや主張、自分を大切にすることを遠慮しがち


・親や親戚、周囲の大人から「助けてあげてね」「頑張って」「○○ちゃんは耳が聞こえなくても、きょうだいがいるから安心ね」と声かけされたり、「えらいね」がプレッシャーになる


・聞こえないきょうだいや親への悪口が耳に入ってしまったり、からかわれたりする

これらの悩みや課題は、正直、なかなかこれだという解決策がないものもあるのですが、まずは親御さんや周囲の大人が自分のことを気にかけてくれていることが、言葉と態度でSODAのお子さんに伝わるだけでも大きく違うと思います。

また、こんなこと言ってもいいのかな?と悩みがちな内容なので、お子さんとは、嫌だと感じたこと、助けてほしいこと、わからないことや疑問などを遠慮しないで言いやすいオープンな関係を作ることが大切ですね。

爆発してしまったときこそシッカリと聞いてあげて

SOSを上手に出せずに我慢を続けて爆発してしまった経験のあるSODAも多いですが、どうしてそんなこと言うの!と否定したり、言い聞かせたりしてしまうと、何も言えなくなってしまいます。親御さんにとってもショックなことは重々承知なのですが…、まずは「そうだったんだね」「言ってくれてありがとう」と受け止めて、「どうしたらいいかな?」と一緒に考えていただけたらと思います。

実際のSODAのお子さんの声を共有します

こちらはSODAの会で出されたSODAのお子さんの声です。SODAの大人や聞こえない大人も、SODAのお子さんや親御さんと一緒にハッとさせられたり、共感したり、時々ほほえましくなったりしながり、頭を悩ませて一緒に考えています。

「聞こえるから・聞こえないからはやめて」

 

「弟と私のハードルの高さが違うのはどうして?」


「難聴だから○○していいとか、特別扱いは違う」


「親が怒っている時に、妹は知らんぷりしているのはズルい」


「私は弟に協力しているけれど、弟は私に何をしてくれるの?」


「私に変に期待しないで。 そして、弟が何もできないわけじゃないよ、ってことを分かってほしい。」


「“聞こえる・聞こえない”の前に“人間として”、“一人の私として”見てほしい」

大人になったSODAと聞こえないきょうだいからのメッセージ

 大人になると、互いに「別々の人生」を歩んでいくようになります。大人になったSODAと聞こえないきょうだいからのメッセージをご紹介します。

「お互いに遠慮なく話したい、話してほしい。話せば解決につながるかも」

 

「ケンカもコミュニケーション ちゃんとケンカすることが大事」


「身近すぎて言えないこともある」 


「やっと今だから言えることもある、大人になったから」


「きょうだいがいてよかったよ」

 また、きょうだいは親よりも長い付き合いになります。 こちらの50代のSODA(6歳下に妹さんがいる)の手記https://sibkoto.org/articles/detail/40は、子どもの頃のエピソードから、まだ30代の私が経験していない親の介護や看取りの経験、その上でのきょうだいが助け合うヒントについて書かれていて、私自身とても参考になりました。

聞こえるきょうだい(SODA)の、結婚へのハードルはどうだった?

結婚はユカコさんがYouTubeでお話されているのと同じように、問題なかった!というケースや相手やその家族に壁が…というケース等様々ですが、基本的にSODAも共通していると思います。

私自身のことは、ご関心のある方はこちらの対談記事を読んでいただければと思いますが、障害のある家族等がいない家庭で育った相手に対して、弟が聞こえないことをいつ、どう話すのかを悩んでいた時期があります。

誤解されたくないのですが、弟のことが恥ずかしかったり、隠したいのではなく、むしろ話して理解してほしいのだけれども、何よりも「相手の反応が不安」でした。また、結婚することになった後に、実は、弟も自分のことが私の結婚の支障にならないかと心配していたと、母に言われました。

ちなみに、夫は障害関係の仕事で出会った同業者で、SODAではないですが、やや似た立場です。そういう意味では、経験や感覚に近い部分があるというか。今は実家の両親や弟に会うのも年に数回の盆暮れ、合同誕生会くらいですが、夫が弟や両親と自然に仲良くしてくれて、SODAのことへの理解・応援もありがたいなと思っています。

最初はひとりで悩んでいたのですが、きょうだい会や聞こえない友人・先輩に出会って、悩みを相談したり、体験談を教えてもらえるようになったことが大きかったですね。

藤木さんは手話を覚えたのは弟さんが聞こえないから?

弟との会話は基本的に口話だったので手話を使わなかった

実は、私と手話の出会いは弟とはちょっと違う出会いからなんですよね。

子どもの頃は、弟(補聴器)も私も口話だったんです。口を大きくゆっくりはっきり、表情と身振り、ときどき指文字で。そのSODA語(?)で一緒にゲームやケンカをしていました。また、弟には通じにくい父や親戚、周囲の大人との通訳のようなこともしていました。

弟は高校からろう学校に入って手話に出会い、私も大学入学時に、母から「手話サークルに入ってほしいな」と言われたのですが、当時は自分が手話をするという発想やイメージは全くなくて、中学から続けていたテニスに夢中でした。

手話で活躍するろう者の弁護士らとの出会い

転機になった手話との「出会い」は20代後半の新人弁護士時代に、手話で活躍するろう者の弁護士らと出会ったことです。それから、ろう者、手話通訳者の方々と一緒に仕事や活動をするようになりました。当時は、一番年下だったので「聞こえる妹(たとえ娘の世代であっても)」として可愛がってもらいましたし、自分を持っていて考え方や生き方がカッコいいなと憧れて、「私もそうなりたい!たくさん教えてほしいことや話したいことがある!」と思って手話を始めたんです。

手話を始めて、情報がつたわっていなかったことを実感した

今は、私は手話、弟は声でやりとりすることが多いですが、人にあまり聞かれたくない内容の場合は互いに手話だけで話すこともあります。私が手話をするようになって、弟からは「わかりやすくなった」と言われました。

思い返すと、弟に勉強を教えていた時に「わかった」と言いながら全く違う答えが返ってきて怒りつつ心配になったことがあったのですが、きっと説明が伝わっていなかったのですね。また、姉弟という上下関係はいやだという意味で言った「これからはお姉ちゃんをやめる!」が、その言葉の通り「きょうだいの縁を切る」と受け取られていたことも発覚して慌てました…

他のSODAや聞こえない友人からも、「大人になると、細かい手続きや社会情勢など内容が格段に複雑になり、口話だけで通じるのは難しい」、「LINEやパソコンに文字を打ったり、音声認識アプリなどを使っている」、「自治体の手話通訳や要約筆記の公的派遣制度を利用している」、「手話を習い始めた」などの話があります。

というわけで、私がSODAとして口話と手話の両方を経験したのは「出会い」という偶然の要素がかなり大きいんです。手話に出会えて良かったと思っていますが、「誰に出会えたか」が非常に大きかったと感じていますね。

最後にメッセージ

「聞こえるきょうだい(兄弟姉妹)」=SODA(ソーダ)について、いかがでしたでしょうか?少しでもご参考やヒントになりましたら幸いです。

 私自身も、SODAの会、インターネット等を通して出会った親御さんからは、親としての視点やお気持ちを教えていただいています。私の親も、私と弟のことを一生懸命育ててくれたんだなと改めて感じるようになりました。

 一番大切なのは「出会い」だと思っています。子育てに奮闘中の親御さん、聞こえないお子さん、SODAのお子さんには、素敵な大人にたくさん出会ってほしいなと願っています!

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【告知】
この記事を執筆してくださった藤木さんがいるSODAの会が企画されているイベントです♪
よかったらぜひご参加ください〜!!!✨byユカコ
詳細は聞こえないきょうだいをもつSODAソーダの会HPをご覧ください