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大人になってから手話を学ぶ難聴者

公開日2017/07/16最終更新日2017/07/16

手話と口話

大人になってから手話を学ぶ難聴者

こんにちは!デフサポのユカコです。

実は6月末、大阪に行ったときにずいぶん昔、一緒に学んでいた難聴のK君に久しぶりに会いました。
今日はそのお話しをしたいと思います。

今、K君は手話をメインとして使っています。

そんな彼ですが、
小中校と一般の学校に通い
大学進学を経て、

今薬剤師と、手話講師等をしています。
元々、彼はずっと一般の学校で口話で育ってきていました。

でも、大人になって再会すると手話を中心に会話しており

「手話のほうが本来の自分の気持ちを表現できるし、手話のほうが自分に合っている」

と言っていました。
(余談)
Kくんはすごく努力家で、一緒に学んでいるときもすごく勉強熱心なおうちだったように記憶しています。
私の母なんて、発音の練習の時間の時
私が「先生が発音変やったら注意してって言うてたで~!」というと
母は「えー毎日聞いててユカコの発音に耳が慣れてるから、変なところとか言われても分からへん!・・・うん、何回聞いてもわからへん!」
と言われ、「他のご両親はみんなめっちゃ真剣やのに!うちの親超適当すぎへん?!」といつも思っていました。笑
・・・という話は置いておいて。

幼少期はご両親の教育方針で「口話」を選択した人が、大人(ある程度自分で判断できる年齢)になってから「手話」を選択する人

って結構難聴者にはよくいるんです。

幼少期から手話を選択してほしかったかどうか

私の場合は、口話中心に過ごすことに不満を感じたことがないので…、手話に切り替えた人にこの質問、ずっと聞いてみたかったんです。

口話よりも手話を取るくらい手話のほうがいいって思っているってことは…
「幼少期から手話を選択してほしかった!」と思っているのかどうか?
すごく気になっていました。なのでK君にも聞いてみました。

「Kくんは、手話のほうが自分に合っているって言うけど、小さい時に【聾学校】に入れてほしかったなあ~って思う?」と。

そうすると彼の答えは意外や意外。

「ううん、一般の学校でよかったなあ~。特に中高は私立だったからそれがすごくよかったと思っている!」

もう、私は正直言ってこの答えにびっくり!!
だって、今【手話のほうが口話より自分らしく話せる】って思うんでしょ?
なのに、なんで手話中心の聾学校じゃなくて口話中心の一般の学校がよかった~って思うのー?と質問を重ねました。

一般の学校に行ってきてよかったと思う理由(K君の場合)

それに対する彼の答えはこちら。

■健聴者の「リズム」が掴めたこと。
会話のリズムのことだと思っていたのですが、会話のリズムだけではなく生活のリズムも含めての、【リズム】だそうです。
なるほどなあ~と思いました。例えば細かいことについての説明なくポンポン授業が進んでいくのも一般校の特徴です。
そういった面も含めて健聴者のリズムが掴めたことが良かったとのこと。

■健聴者の「感覚」が分かったこと。
健聴者と過ごしてきたからこそ、同じような感覚が理解できるし、K君自身も健聴者と同じような感覚を持っています。
どうしても聞こえないと情報がそれだけ入らないため偏った考えをしてしまうことがあったり、聞こえない人特有のルールがあったりします。
もちろん同じように聞こえる人には聞こえる人特有のルールがあります。そういった違いがあることや、聞こえる人のルールをを当たり前の感覚としてにとらえることができると大人になったとき、楽なのかなあと実感しています。

■「達成感」を得ることができたこと
※これは私には目から鱗の話でした。
コミュニケーションで、なかなか相手の言っていることなどわからないことも多かったらしいです。その中で、相手に自分の言いたいことが伝わったり、その逆で相手の言いたいことが自分に伝わったときに「やった!伝わった!」という達成感があったそうです。
そして、そういったコミュニケーションができたことが、そのまま自分の自信につながる。と言っていました。
おおーやっぱ普通学校に進学することのメリットは皆割と同じことを考えますね!笑。私も1つ目と2つ目はかなり共感します。3つ目はなるほど~と思いました。笑

じゃあ、逆に…小さい時にもし聾学校だったらどうだった?

って聞いたんです。

そうするとその返事は

聾学校はほんとにすごく楽しく過ごせると思う。
聞こえについてもフォローしてもらえるし、皆とも意思疎通ができて疎外感を感じることもないしすっごく楽しくて充実した学校生活だったんじゃないかな。

でも、やっぱり人数がかなり少ない分狭い世界でもあるし、健聴者の感覚とかは分からないままだったと思う。
例えば友人との会話に入れないとか、授業が分からないとか、そういう疎外感がないのは、良くも悪くも甘い生活だよね。

だから俺は健聴者の感覚を知れた、常識を知ることができたという意味でも、中高私立に行かせてもらって本当によかったなあって思ってる」

と言っていました。
(聾学校のほうが学校生活は楽しいんや~!確かにコミュニケーションで困ることはないし、言っていることに対して、なるほどなあ~!!と思うのと同時に、私自身は普通学校でとても楽しく過ごしてきたので、他の聞こえない子が普通学校でももっと楽しめるようにしたいなあーーと新たに決意した次第です♪)

 

K君を含め、大人になってから手話を覚えた難聴者の方に最近よく会うのですが手話のメリットもうまく活用しながら口話と手話を使い分けている印象が強いです。

手話には手話のメリットがあります。

大人になってから手話を学ぶ難聴者は、割とこういう点でメリットを感じているのかな?と考えています

■聞き返す、言い直すという手間が省ける
普通学校ではコミュニケーションがうまくいかなくても、手話だと一発で通じるし、お互いノンストレスで会話ができる!

■意思疎通が楽になる&安心感がある
意思疎通が口話だと50%くらいしかわからなかったのが、ほぼ100%通じ合えるので、すごく楽で、情報に取り残されていないという安心感がある。

■同士ができてうれしい&楽しい
今まで聞こえない人と接したことがあまりなかったけど、仲間(同士)ができたようですごく楽しい!

■今まで会話に参加できなかった場面でも参加ができる
飲み会や会議のような複数人での会話で、口話の時は全然参加できず疎外感を感じたことがあるが、手話であれば参加ができ、自分の発言もできるので自分らしくいることができる

健聴の世界で過ごしたことがあるからこそ、手話のありがたみもわかる人も多い

こういった環境を当たり前に与えられてこなかった人、例えば私を含め健聴者の世界で過ごしたことがある人は「意思疎通が100%できることの素晴らしさや安心感」をより感じます。

また、健聴者が当たり前にできることであっても、聞こえないがゆえにできない事も多いということも常々実感しています。

大人になってから手話を学ぶ難聴者に聞いたところ、皆さん「一般の学校に行っていてよかった!」とそれぞれおっしゃるので
やっぱり一般的な感覚であったり、会話のテンポを知っておくことができるというメリットも大きいんだなあ~と実感しています。そして誤解を招く前に言っておきますが…私が言いたいのは、普通学校がいいとかではなく

人は、基本的に実際に経験してきたことの中でしか判断ができない!

普通学校に行ってきて、大人になってから手話メインで過ごしている人でも、幼少期に「普通学校に行ってきてよかった」と言っているわけです。

そしてその逆もしかり。聾学校に行ってきて、大人になってからは口話で仕事を頑張っている人も幼少期に「聾学校に行ってきてよかった」と言っています。

本当、面白いですよね。基本的に自分の進んできた道がなんだかんだ一番と思ってるわけです。

(面白がってはあかんのかもやけどw)
私も、自分自身が経験してきたように普通学校に行ってきてよかった!と思っているわけですし!笑
このことから、

どんな選択でも、子供をのことを一番知っているご両親の選択が正解!

だと思っています。

だから、子供が大人になってからとか、大きくなってから手話を学び始めたとしても、小さい時の親の選択に対して不満があるわけではない!と知ってほしいと思っています。

本当にどの選択をしても、ご両親の選択が正解なんだと思います!✨結構、こういうことを気にしているご両親から質問があることも多く、子供が将来手話に進むこともあり得ますよね…?私達が今口話を希望して、選択することは間違っていないかがとても心配です!子供に負担をかけていたらどうしよう。。。?とおっしゃるのですが、そうではなくて、口話を選んできたからこそできることがたくさんあってその中の選択肢の一つとして、口話に加えて、手話も選んだと思えばいいのかなあと思っています。

最終的な目標は本人が社会的に自立して、かつ楽しく人生を過ごす!こと。

手段はどうあれ、結果が良ければOKだと私は思っています!♪

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