【私見】生野聴覚支援学校の生徒が重機にはねられた件について、難聴者視点から
公開日2018/02/02最終更新日2018/02/02
日常
2018年2月1日
大阪府立生野聴覚支援学校の生徒さん・先生方が、重機にはねられる痛々しい事故がおきました。
お亡くなりになった、井出安優香さんにはご冥福をお祈りします。
まだ小学校5年生。これからの未来が開けていたことを思うと本当に残念でなりません。
実は生野聴覚支援学校は実は、私にとってすごく縁のある場所でして、学校内や、授業を見学させていただいたり、いろんな親御さんとお話をさせていただいたことも多々あります。
そしてこの事故には、知り合いの方も巻き込まれ、怪我をされました。
そんな中でこのニュースを片っ端から食い入るように見ていたのですが、いろいろな方がいろんな批評を述べている中、ちょっとその見解は違うのでは?と思うこともあったため、今回筆を取らせていただきました。
ニュースの内容はこちらです。
歩道に重機 女児死亡・4人けが
02月01日 20時14分
1日午後、大阪・生野区の歩道で聴覚支援学校に通う3人の子どもを含む5人が突っ込んできたショベルカーにはねられ、このうち女の子1人が死亡しました。
ショベルカーを運転していた建設会社の従業員は過失運転傷害の疑いで逮捕され、調べに対し「ブレーキとアクセルを踏み間違えた」と供述しているということで、警察が詳しい状況を調べています。
1日午後4時前、大阪・生野区桃谷の交差点でショベルカーが歩道に突っ込み、信号待ちをしていた5人をはねました。
警察などによりますと、はねられたのは、いずれも大阪府立生野聴覚支援学校に通う小学部5年の児童3人と40代の教員2人で、5人は病院に運ばれましたが、このうち豊中市に住む井出安優香さん(11)が死亡しました。
ほかの4人は頭や足などに重軽傷を負いましたが、命に別状はないということです。
警察はショベルカーを運転していた大阪・阿倍野区の建設会社の従業員、佐野拓哉容疑者(35)を過失運転傷害の疑いでその場で逮捕しました。
調べに対し、「交差点の手前で信号が赤になったので、ブレーキを踏もうとしたら間違えてアクセルを踏んでしまった」と供述しているということで、警察が詳しい状況を調べています。
NHK NEWS WEBより一部引用。全文はこちら→全文
耳が聞こえなかったから逃げられなかった。もし聞こえていれば逃げられたかも。
結構こういうふうに書かれていたり、ニュースでもこんな風に言われていました。
耳が聞こえていなかったから余計に逃げられなかったのでは?と。もし聞こえていたら逃げれたかもしれないというようなニュアンスでお話されていたりもしています。
他にも、ネットに上がっていたものを抜粋すると
・危ない!と叫んでも聞こえない
・音が聞こえていたら助かったかもね。
・耳が不自由だから轟音でショベルカーがきても聞こえない
・子供でも重機なら音でわかるだろ、避けろよ
・聴覚支援学校の子だから間に合わなかった
とか色々書かれています。
ただ、私自身、今回はそれは関係ないと思っています。何故かと言うと
・教員は聞こえる人だったと聞いています。
教員は聞こえる人だったそうです。もちろんろう学校には聞こえない教員がいらっしゃるのも事実ですが、今回の場合は聞こえる教員がいたということで、絶対重機の音は聞こえていたはずです。
もし、逃げられる速度であれば、教員が子どもたちの手を引っ張ったりしてバッと逃げ出すでしょう。
聞こえる教員が2人もいて、大人の2人共が間に合わないということはそもそも聞こえ以前に重機のスピードが早かったか、逃げられない状況だったのではないかと感じています。
なので、子供なんてなおさら重機が来ていることに気がついても間に合わなかったんじゃないかと思っています。
・「聞こえない」といっても重機の音が全く聞こえないレベルの子は少ない。
はっきり言って、「聞こえない」と聞くと全く音がわからない!とついつい思ってしまう方が多いのですが、実際はそんなことはなく補聴器をつけたり、人工内耳を装用することで結構「音」自体は入っている子の方が多いです。
もちろん、耳で聴く力が強い、弱いはありますが、重機が突っ込んできたとして、その音が全く聞こえない!!と言う子は実は少ないんですね。もちろん、聴神経がないなどで補聴器や人工内耳をつけても全く聞こえない人もいますが、割合としては少ないです。
補聴器や人工内耳を装用することで30dB〜55dBは聞こえるようになる子供のほうが多いと考えて良いでしょう。(dB・難聴の基礎知識)
※音が聞こえるようになったとしても、感音性難聴の場合歪んで聞こえているので正確に聞き取れるわけではありません!
ただ、なにか音がしたぞ!?と振り向くくらいは聞こえている可能性があるという感じになります。
事故に遭われたお子さん3名の聴力はわかりませんが、3人が3人共全くもって音が聞こえなかったということは可能性として少ないかなと考えます。
・聞こえない子供は振動などに敏感な子が多い。
重機が、例えば歩道に乗り込んでくるってことは何かしら振動があったりするのではないかと考えます。
ただ、こちらはキャタピラかタイヤか、でも違ってくるのでなんとも言えませんが、聞こえない子っていうのは振動には比較的敏感な子が多いです。
例えばプリウスなどの電気自動車なんかが乗り越えてきても、音も振動も静かだし気が付かないと思うんですね。
なので、電気自動車とかだったら、聞こえてたら助かったんじゃない?とか思うかもしれません。でも今回の場合は重機ですし、重量もあると思いますので振動もありそうです。そういった意味で、聞こえる、聞こえないは関係なく、間に合わなかったのでは?と思っています。
もちろん、聞こえないことが原因で起きる事故もある。
さっき話したようにエンジン音が静かな乗用車が後ろから来たら、静かすぎて気が付きません。
クラクションを鳴らされてやっと気づく子もいるでしょう。
他にも自転車が後ろから来ても全くわからないので、追い抜きざまにぶつかってしまったり、すれ違う場合だとしても会話のときは視線を会話する相手に向けるので、どうしても前方不注意になることも多いです。
なので、聞こえないということはそれだけ日常的に危険なことが生じます。
そういった点ではすごく気にしないといけないことでもあり、今回に関しては「聞こえないこと」は関係なかったと思いますが、聞こえないことが原因で起きる事故もたくさんあります。
これからの世の中、どんどん技術も発達しているのでそういった事故が回避できるようなアイテムなどが出ると良いなーと個人的には心待ちにしています。例えば後ろから車や自転車が来たら振動する時計とか。右側から来ているなら右側が振動するとかあればいいなと思ったり。
聞こえない事について多くの人に正しい知識を知ってほしい!
「聞こえない」ことについて、一般的な人たちのイメージ。(全く聞こえない!とか。)
そして「難聴や聴覚障害」に対しての知識そのものが少ないので、やっぱりどうしても思い込みで色々「聞こえなかったから」という風に結びつけてしまう気持ちもわかります。
でも、今回に関しては「聞こえない」ことは関係なかったんじゃないかなと私自身は思っています。
そして、今回こういうふうに事故があって、「聴覚支援学校」のことがいろんなニュースに載りました。
聞こえないっていうのは大変なんだけど、殆どの親御さんもお子さんも頑張っていて、言葉を話せるようにとか、コミュニケーションが取れるように、喋れるようにと、それはもう赤ちゃんの頃から一生懸命頑張っているんです。
勝手に「偏見」や「思い込み」を持たずに、ぜひ多くの人に「聞こえないこと」そのものについて少しでも正しい知識を知ってもらえればと願います。
難聴について知ってもらいたいので、是非以下の記事をお時間有る時にでも見てくださるとうれしいです!
そして、私自身、もっとしっかりいろいろな人に難聴についての知識を知ってもらえるようにこれからも引き続き頑張っていきたいと思います。
最後になりましたが改めて、井出安優香さんのご冥福をお祈りします。そして怪我をされた教員の方2名様、そして子どもたちも早く回復するよう、心よりお祈り申し上げます。