難聴児が弱い言葉はズバリこれ!必ず攻略しないと勉強ができない子になる。
公開日2017/03/10最終更新日2018/03/24
ことば・語彙
デフサポのユカコです。
今日は難聴児がどうしても弱くなりがちな言葉についてお話しします。
さて。
ことばは大きく2つに分かれる!
①生活言語
これは、日常会話に必要な言葉です。
友達とのかかわりや遊び、そして親との生活を通じて覚えていく言葉です。
基本的なイメージとしては1:1、1:複数人での対人関係で使う言葉になります。
健聴者の場合、4歳までに日常会話に必要な言葉は網羅されるといわれています。
つまり、4歳になると大体の子が親との日常会話には全く困らないし、お友達とも自由にコミュニケーションが取れるようになってくるということです。
②学習言語
これは、思考の道具になる言葉です。
読書や学校の授業、自習を通して子供たちが意図的に習得をする言葉です。
つまり本であったり、テレビのニュースであったり、先生が話すことであったり…そういったところから勉強する言語になります。
”意図的に”とありますが小さいうちは子供たちが自分で覚えよう!と思って覚えるわけではなく自然と覚えていくものも多くあります。イメージ的には1:1のコミュニケーションの時につかう言葉ではなく、先生が全体に対して使う言葉や指示であったり、第三者が一方的に話していたりする言葉だと思ってください。
そしてここで覚えた言葉は、コミュニケーションではあまり使いません。
どういうときに使うかというと…話を聞いて理解したりメモを取ったりするときにつかったり、思考の道具、新しい知識を得るために使うことになります。
といっても想像しにくいとおもうので…例えを書いてみます。
例:・方位磁石とは…
棒のように細長い普通の棒磁石を水に浮かばせた発泡スチロールの上に乗せることで磁石のN極は北の方角を指し示します。これを利用して方角を知ることができます。これを利用したものが方位磁石です。
そして…難聴児はとにかく学習言語が弱い!
さらに、本来習得すべき幼児期後半の時期(4歳ぐらい)からうまく習得できていないことが多いです。
しかも…
学習言語の躓きは日常会話では全くわかりません!
コミュニケーションの時に使う言葉(生活言語)と全く違う言葉になるからです。
なので
難聴児の思考の言葉が弱すぎる!ということに気が付くのはたいてい小学校に入ってから。下手したら小学校高学年になって初めて
「あれ?うちの子、、、語彙が少ない?」
「あれ?なんでこんな簡単な勉強についていけないんだろう?」
となって、言葉が足りていないことに気が付くわけです。
発見が遅くなりやすいのが軽度難聴、中等度難聴、そして人工内耳装用者!
なぜかというと…親とも普通にコミュニケーションをとることができ、受け答えも問題なくできる、先生との会話やお友達の会話もまあまあ、たまに聞き間違えたとしても内容はある程度分かる。(ざっくりいうと6~7割程度は問題なくコミュニケーションが取れる人です。)
それなのに!就学するとどんどんうちの子だけ勉強が遅れていく・・・とか、お友達ともコミュニケーションはとれてたはずなのにだんだん周りのお友達の会話についていけなくなっている・・・。ということで露呈します。
ついつい忘れがちなのですがコミュニケーションができても、実際の情報量は↓のイラストぐらい違うと思ってください。
なので…普段使わない言葉であっても、聞こえる親自身はテレビのニュースであったり本などから自然と身についているので「え!?なんでこんなことも知らないの!?」となってしまうのですが、
難聴児に対してはどうしても意図的に教えていく必要があります。
難聴児が学習言語を習得できないわけ
①普段のコミュニケーションではほぼ使わないため。
②話している相手が必ず目の前にいるとは限らないため。(本やテレビ等)
③表情や体の動きでは表せられないので、難聴者が得意な”目で表情や雰囲気を読み取ったり”することができないため。
④言語以外からの情報がゼロの上に、その言語を使って理解、思考、分析、推測といった高度な作業を”脳”の中で行う必要があるため。
⑤言葉の力(聞く・読む・書く・話す)4つを使い分ける必要があるため。
というわけです。
(書き出してみて思ったけど、どう見ても難聴者にとって苦手な分野でしょ?笑)
学習言語が身についてないと語彙がわかっていても思考につなげることができない!
例えば九九を完璧に覚えている難聴児がいるとします。
『4×8=32』も、『8×4=32』も完璧に言えるのです。
しかし…
『子供が8人います。りんごを一人あたり4つずつ8人のお友達に配るには、
りんごは全部で何個必要ですか。』
といった簡単な文章題になるだけで「うーんと…」と悩んでしまう難聴児が多々います。
8×4=32”人”と答えたり…
(答えは8×4=32個ということになります。)
単純な計算であれば全く問題ないが、それが文章になっただけで文章の趣旨がわからなくなってしまうという子がたくさんいます。
例えば社会や理科などでも、雰囲気で理解していたり、わかる単語を拾い読みしていたりすることも多々あります。それでなんとかなるのは小学校1-2年まで。3年からはそうはいかなくなってきます。
さらに、学習言語を獲得していることが、学校の教科学習を進めていく上での大前提となります。
なので、学習言語を習得できていない難聴児は授業の内容がわからない、先生の指示がわからない、抽象的な語彙や複雑な文章になるとさっぱりわからないということになってしまうことが多々あります。
しかーーーも!
学習言語のレベルの違いはあれど、健聴児であれば4歳5歳から自動的に身についています。さらに自発的学習ができるためどんどん成長していきます。
つまり…難聴者の場合、学習言語の習得ができていないと、気づかないうちに健聴児の4-5歳レベルのコミュニケーションレベルのまま言葉の発達が止まってしまうということです。
そしてさんざん脅してきたけど、安心してください。
学習言語は鍛えることができる!
学習言語はちゃんと鍛えることができます。子供のレベルに応じて訓練、練習を行うことで年齢相応まで鍛えることができます。
とはいえ、一朝一夕にできるものではありませんのでできる限り長いスパンで定期的に勉強をすることが大切になります。
(ではどうやって鍛えればいいのか…?こちらに関してはかなりボリュームがあるので講演会・ワークショップでお話しさせていただくことにします。要望があれば、別途書いていきたいと思います。)
追記:学習言語についての記事