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【分かりやすい!】人工内耳のキホンについて徹底解説!

公開日2017/02/13最終更新日2018/08/15

■人工内耳と補聴器

【分かりやすい!】人工内耳のキホンについて徹底解説!

デフサポのユカコです。

さて、今日は難聴者にとって一大革命といわれている人工内耳についてのお話し!

※主に小児の人工内耳について記載していきます。

人工内耳と補聴器の違い

補聴器→音を増幅するもの
人工内耳→聴神経を直接刺激するもの

人工内耳は音を電気信号に変え蝸牛の中に刺激装置を入れ、直接聴神経を刺激するため、補聴器のように音を増幅してもあまり効果が見込まれていない人に有効といわれている。

人工内耳の部品について

人工内耳は体内に埋め込むインプラントと、耳にかけるスピーチプロセッサ(サウンドプロセッサということもある)や送信コイル等の体外機器で構成されている。スピーチプロセッサは耳かけ補聴器に似ています。

▼インプラント(体内に埋め込む)

▼スピーチプロセッサ&送信コイル
(スピーチプロセッサを耳にかけ、送信コイルを頭に磁石の力でつける)

(画像はコクレア社HPより)

人工内耳の音が伝わる仕組み

①マイクで音を集める
②スピーチプロセッサで電気信号に変換する
③電気信号が送信コイルに行く
④送信コイルから無線信号で皮膚の下のインプラント(受信コイル)に送られる
⑤蝸牛に入った電極アレイから周りの聴神経を刺激する
⑥聴神経から脳へと信号が伝わり音として認識する

人間の聴神経と人工内耳の電極の違い

正常な蝸牛には音を感じる細胞が約3500個ある。
加えて音に対する純音声を高めるための有毛細胞が1万2000個ある。

これに対して人工内耳は最大22本の電極数しかない!

つまり、本来なら1万5500個の音に関する細胞で聞こえている内容をたった22本の電極でカバーすることになる。

そのためどうしても複雑な音のすべての情報を伝えることはできず、音の重要な情報のみを選んで伝えている。
これが人工内耳は”機械的な音”に聞こえるといわれている理由となる。

人工内耳の適応基準

■成人の場合

90デシベル以上の高度難聴で、補聴器装用効果が乏しいもの
(1998年4月 日本耳鼻咽喉科学会より)

■小児の場合

・原則1歳以上
・90デシベル以上の高度難聴
・少なくとも6か月間補聴器を試みても聴覚活用ができない
(2014年2月 日本耳鼻咽喉科学会より)

※人工内耳の適用基準についての詳細は日本耳鼻咽喉科学会のHPにて確認できます。

人工内耳の術前検査(乳幼児の場合)

■聴こえの検査

起きた状態で確認する行動反応聴力検査と、眠った状態で音を聞いた時の脳波を確認するABR検査やASSR検査を行う。この2つの検査を行うことでどのくらい聞こえているのかを確認する。

■補聴器装用効果検査

補聴器を装用して、言葉の聞き取りがどの程度向上するかを調べる検査。

■CT検査/MRI検査

CT検査で中耳、内耳の状態を確認したり、中耳炎や、内耳奇形等で蝸牛に電極を挿入するスペースが存在しないことがあるため、事前にMRI等で確認を行う。また、活動性の中耳炎があると、手術は適用不可となる

■平衡機能検査

内耳には、聞こえの蝸牛神経のほかに、身体のバランスをとる神経(前庭神経)もある。平衡機能を総合的に調べることで、術後に生じるめまいについてある程度予測ができるようになる。

人工内耳の手術

全身麻酔で約2~3時間程度で終わることが多い。
ほとんどは翌日から普通に起き上がり、歩くことが可能なレベルで、比較的安全な手術の部類に入る。

入院期間は1-2週間前後
▼手術の流れ
①髪の毛を剃る
②耳の後ろを切開する
③人工内耳の体内に入れる部品(インプラント)を入れるために側頭骨を削る
④インプラント本体を側頭骨に固定する
⑤蝸牛に穴をあけ、電極アレイを挿入する
⑥動作テストが問題なければ縫合して終了!

※現在は傷口はボンド等で止めたりするので抜糸は不要なことが多い

今の世の中、めっちゃハイテクになってきていますね!傷口、ボンドで止めれるん!?とびっくりしました。笑

手術における合併症や後遺症の可能性

・めまい感やふらつきが生じることがあるが、通常1~2週間以内に治る。

・味覚の障害が起こることがあるが、通常6カ月から1年以内に軽快することが多い。

・顔面神経近くの骨を削るため顔面麻痺が生じることがあるが、通常回復する。

・その他髄膜炎や感染症にかかる可能性もある。

いろいろな後遺症の可能性はありますが、生涯にわたって続くようなものは少なく、比較的安全な手術と言えます。
現在は人工内耳の手術が年間で600例は行われているとのこと、これからも増えることを考えればますます実績は増えていくものと考えられています。

人工内耳のマッピング(音入れ)とは

①手術後2~4週間後に初めて耳にかけるサウンドプロセッサを装着
②内耳に埋め込まれている電極アレイ一つ一つにどのくらいの電気を流すかを設定する。
③上記②で設定した情報を「マップ」という。
※マップは専門医か言語聴覚士が個人個人に合った物を作成する。
④「マップ」を細かく調整することを「マッピング」という。
⑤「マッピング」をして初めて外部の音を入れ、ようやく音が聞こえるようになる!

つまり手術をしたらすぐにその日から聞こえるようになる!というわけではなく、2週間たって落ち着いてから調整をはじめ、その細かな調整が終わって初めて音が聞こえるようになるということです。

マッピングは術後は頻繁に行われますが、安定してからは年に1~2回ペースに落ち着きます。

人工内耳を入れた後のフォロー体制

小児の場合は、先天性難聴が多く、聴覚・言語の発達のためのリハビリテーションが必須となる。人工内耳を入れるだけで聞き取りが自動的にでき、言葉が自動的に話せるようになるわけではないため、訓練が必ず必要となる。また、人工内耳の調整(マッピング)に際して、小児の場合自分で音感を訴えることが難しいことも多く、専門の言語聴覚士によるきめ細かいサポートが必須となる。

また病院での指導のみでは、すべてをカバーできるものではなく、難聴児通園施設や聴覚特別支援学校(ろう学校)、保育所、幼稚園、学校などとの連携が必要と言われている。両親を中心に療育機関、病院の3者が協力して行くことが大切である。

このことから人工内耳を入れるときは必ず両親のサポートが必要不可欠ということですね。

人工内耳を入れることで、できなくなること

・MRI検査(場合によってはカバー等が必要な可能性がある)
・手術をする際の電気メス(大丈夫なものと、NGなものがある)
・電気風呂
・高周波、低周波をつかう電気治療
・ダイビング(水深25メートル以上潜るのは禁止)
・格闘技等、頭部に強い衝撃が加わる可能性があるもの

逆に言えばこれ以外は問題ないということです。水泳も体外機器を外せばできますし、基本的な制限は受けないと考えられます。

人工内耳を入れると補聴器には戻せないのか

昔はそのように言われていたこともあるが、いまは本来の聴力を維持する手術方法が行われているため、もし人工内耳が合わず補聴器に戻したいとなった場合補聴器に戻すことは可能である。
※尚、聴力温存をしてもどうしても5-10dBは落ちてしまう可能性はあるとのこと。

人工内耳を気軽に…とまではいかないが、人工内耳をしても合わなければ最悪使わないor補聴器に戻すという選択肢があるだけでだいぶ幅が広がり、親にとっても選択しやすくなると思います。

人工内耳を作っている会社について

人工内耳は、3社が独占しています。(以下リンクは各メーカーのサイトに飛びます。)

Cochlear(コクレア社)
Med-el(メドエル社)
Asvasced Bionics(バイオニクス社)

人工内耳での聴力

補聴器の場合100dB の高度難聴の人が補聴器で補聴しても60-70dB 程度にしか聴力を獲得できないといわれているが、人工内耳であれば平均40-50dB の聴力を確保できる。つまり人の話し声や日常会話の音域までは聞こえるようになると言われている。

そのため新生児スクリーニングで重度難聴が判明した子は言語習得期前に人工内耳を埋め込み早い段階でサポートを行うことが近年の主流になっています。

人工内耳での心配な点

・送信コイルをマグネットでくっつけているが、磁石の力が強すぎると長期間つけ続けることで皮膚が壊死してくる可能性もあり、子供の場合は自分で訴えることができない分注意しておきたい。

・乳幼児期に人工内耳を埋め込んだ場合、頭蓋骨の成長に伴い電極が抜けてくる可能性がある。そうならないように手術時点で余裕をもって埋め込んでおり、成長とともに再手術ということはないようになっているが、万一ということもある。また、壊れた場合も同様に再手術を行う必要がある。

・人工内耳を入れたものの、合わず使わない状態になってしまう可能性もある。

 


ながーーーくなりましたが、人工内耳についてなるべくわかりやすくまとめてみました。

必ず人工内耳にするべき!というわけではなく、補聴器で十分補聴効果が見込まれている人もいれば、私のように人工内耳を入れてもいいが特に不便を感じていないので入れていない…というケースもあるかもしれません。その他、骨の奇形など人工内耳を入れたくても入れることができないケースもあります。
いずれ手術のコスト、日々のランニングコストについてもまとめてみたいと思います!

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